企業業績が順調に推移している際、金融機関から求められる提出資料は決算書や試算表だけで済んでいたものが、資金繰り表や事業計画書の提出を求められるようになります。これは裏を返せば、資金繰り表などが求められる段階で、金融機関が融資に対する姿勢をかなり慎重にしていることを意味します。
もし仮に金融機関から資金繰り表の提出を求められた場合、作成に入る前にどのようなポイントが重視されるかを理解しておくことが重要です。
も く じ
Toggle資金繰り表の一例
金融機関が確認するポイントを説明するにあたり、以下の資金繰り表を作成しました。
数字はランダムに生成した架空の数値を使用しているため、細かい部分で整合性が取れていない箇所もありますが、ご了承ください。
この資金繰り表は、日本政策金融公庫のフォーマットを元に加工したものです。日本政策金融公庫の資金繰り表(詳細版)を活用すれば、金融機関への提出にも問題ないものが作成できますので、フォーマットをお探しの方はぜひ参考にしてください。
重要なポイントごとに色分けしており、確認すべきポイントを順に説明していきます。
資金繰り表の整合性
まず最初に確認すべきは、前月繰越現預金(A)と翌月繰越現預金(A+D+G+J)がきちんと連動しているかどうかです。
それぞれの項目の合計値も大まかに確認します。エクセルなどの表計算ソフトを使ってエラーをチェックしながら作成すれば、この点を誤ることは少ないですが、手書きで作成している場合や、不慣れな場合は、前月と翌月の預金が一致しないケースがよく見受けられます。したがって、この点には十分に注意が必要です。
記載した売上高および仕入高の金額と、収入および支払額が対応しているか確認します。
下表のケースではほとんど金額が対応しているため問題はありませんが、合計値が大きくずれていると、資料自体の信ぴょう性が疑われることになります。また、売上高や仕入・外注費の推移が過年度と比較して実現可能な数値になっているかも確認が必要です。過度に楽観的な数値になっていないか注意しましょう。
事業計画書を作成しているのであれば、その計画書の数値を基に資金繰り表を作成する方法もあります。
その他の細かい点として、金融機関が把握している売上の回収サイトと仕入の支払いサイトが一致しているかも確認されます。一時的に大きな見込み受注などがある場合、通常の月と比べて数字が上下し、回収・支払いサイトも異なるため、金融機関に適切に説明できるよう準備しておくことが重要です。
一時的な支払いと経常収支
今回の資金繰り予定表では、12月のその他経費が17百万円と他の月より10百万円大きくなっています。これは、法人税の中間納付を見込んで金額を意図的に増加させたためです。こうした一時的な支出は漏れなく集計し、その内容をきちんと説明できるようにしてください。中間納付額について、支払時期や金額が不明な場合は、顧問税理士に確認するのが最も簡単です。
また、下表のグレー部分は単月ごとの経常収支の合計、右下の部分は年間の経常収支の合計を示しています。この数値をもとに、本業で生み出したキャッシュフローがプラスかどうかも確認ポイントとなります。経常収支がマイナスの場合、本業以外での資金調達が必要となり、現預金残高が減少するため、融資を受ける際には非常に重要な指標となります。
設備投資の状況、資金調達の方法、借入後の現預金水準
下表の例では、50百万円と200百万円の設備投資が行われています。
50百万円の設備投資(下表の緑色部分)は、固定資産の売却とその他の経常外収入(例えば保険積立金の解約など)を元に、固定資産の更新が行われる予定と考えられます。
設備更新の背景や経常外収入については、その出どころや根拠も確認されることが一般的です。
また、200百万円の設備投資については新規の設備投資であると考えられ、その調達には長期借入金200百万円を利用し、さらに短期で借入金50百万円を調達するものと読み取れます。新規設備投資と、それに伴う運転資金の増加が見込まれ、資金繰り表からも金融機関は資金使途を的確に判断します。
今回は設備投資に関するものなので、数値の対応関係から資金使途が非常に分かりやすいですが、赤字補てん資金や関係会社への貸付金などについても、資金繰り表を見れば融資資金の使途が分かります。したがって、資金使途に問題がないか必ず確認される点についても念頭に置いておくべきです。
また、新規に長期の資金調達を行った場合、借入金が毎月増加するため、その返済年数に応じた返済額が対応して増えていることも確認されます。もちろん、新規融資後の現預金の推移から資金繰り状況も確認されます(今回の短期借入金は、期末に現預金が不足するため、設備投資と合わせて資金調達を調整した結果です)。
ここまで、資金繰り表における金融機関が確認するポイントを解説しました。専門家でなければ資金繰りの表の作成は難しいかもしれませんが、次回以降に今回解説したポイントを踏まえ、資金繰り表の作成方法についても解説したいと考えています。
最後に、政府系金融機関で2,000社以上の中小企業に対する融資支援および事業再生の現場に立ち会ってきた経験から、適切な財務管理と資金調達のサポートが中小企業の成長と持続可能性に不可欠であると深く理解しています。これまでにも多くの銀行融資関連の資金調達支援実績があり、直近では3年間融資を受けられなかった企業様でも、銀行融資を成功させた実績があります。
資金調達や資金繰り、経営に関するお悩みをお持ちの経営者の方は、ぜひ弊社までお問い合わせください。