2024年の7月末の日銀追加利上げの後、大手銀行の短期プライムレートの引き上げの動きを筆頭に、地方銀行においても短期プライムレートを引き上げる動きが相次いでいます。特に中小企業の銀行融資においては、金利を重視している中小企業が大半ではないでしょうか。多少金利条件が良くても、実際の中身を見るとメインバンクの思うように仕組まれ、メインバンクにがんじがらめにされている企業もあります。そのような企業は一見するとメインバンクに支援してもらっているように見えますが、実際は銀行側に有利なように融資させられてる状態あります。
自社の資金繰り状況を踏まえた最適な融資条件を把握したうえで、銀行融資の条件についての交渉に臨む必要があります。
も く じ
Toggle銀行融資の借入条件
銀行融資の借入条件と考えるべき点は主に以下の点があります。
- 金融機関
- 民間金機関か政府系金融機関から借りるのか
- 民間金融機関であれば、メガバンク、地方銀行、信用金庫のどの規模の金融機関から借りるのか
- 融資方法
- 証書貸付
- 手形貸し付け
- 当座貸越
- 手形割引
- 私募債等
- 返済期間
- 金利
- 固定金利
- 変動金利
- 融資の保全
- プロパー融資
- 信用保証協会付き融資
- 担保付融資
- 不動産担保
- 預金担保
- 経営者保証の有無、などなど
上記に主な銀行融資の条件を挙げてみましたが、借換にて調達するのか別口にて調達するのかなど、上記以外にも様々な条件がありますが、会社にとって必要とする最適な条件は会社の財務状況や資金繰りの状況によって変わってきます。銀行も営利企業ではあるため、会社が金利を重視しすぎると他の条件については銀行にとって有利な条件を設定していることがあります(金利を下げているため、他の条件については有利な条件を行内で検討しにくい、若しくはできない)。
中小企業においては大企業と異なり銀行融資以外の資金調達手段がほとんど閉ざされているため、適切な条件によって銀行融資を獲得しないと資金繰りに支障を来たし、最悪のケースでは利益が出ていても資金が回らず倒産する黒字倒産の結末を迎えるかもしれません。
優先すべき銀行融資の条件
業況が不安定な中小企業においては、以下の順で優先すべきと弊事務所では考えております。
優先すべき順序
- 融資方法
- 返済期間(借換含む)
- 調達先金融機関
- 保全
- 金利
- その他重視すべき点
最優先事項
まずは、自社の必要な運転資金(いわゆる経常運転資金又は正常運転資金)に見合った資金を短期継続融資で獲得していない場合、すなわちすべての借入を長期借入金で賄っているケースについては運転資金分に返済が食い込むことで資金繰りが厳しくなっていきますので、銀行側の回収が早くなるような追加融資を証書貸付で受けることはNGです。全て長期の証書貸付であれば、銀行側からすると融資の口数を増やせば必然的に融資回収もしやすくなり、逆に会社側は手元資金が返済に回ることで資金繰りが厳しくなります。運転資金見合い部分については、長期の借入金から短期継続融資に切り替えていく必要があります。
銀行融資は資金使途に始まり資金使途に終わると言われるくらいなので、資金使途に応じた融資方法を受けることがまず第一にとなります。
また、運転資金見合いの短期継続融資については、以下で解説しておりますので詳しく知りたい方は以下を参照ください。
中小企業の財務改善!適切な銀行借入の方法
二番目に優先したい事項
融資方法の次に重要なのが、返済期間(借換含む)となります。メインバンクから定期的に融資を受けているといっても返済期間は比較的短く、常に別口扱いで融資を受けていると融資の返済年数がおおむね5年に設定していたとしても、借入金残高を毎月の返済元金合計で割った実質の返済年数が3年を切るケースがあります。こういった場合は金利が良くても一向に資金繰りは改善せず、借入金の中身を組み替えていく必要があります。兎にも角にも資金繰りを優先すべき中小企業においては、多少の高い金利を受け入れてでも、長期の借入や借り換えによる資金繰りの安定化を図る必要があります。多少金利が高くなるといっても、1%も上がることはなく0.2~0.3%程度であり、実際の支払利息踏まえると大した影響はないケースが大半ですので、目の前の資金繰りを最優先してください。
但し、メインバンクの融資シェアが80%を超えるなどの状態だと一筋縄にはいきません。
三番目に優先したい事項
3つ目に重要なのは、調達先金融機関の検討になります。こちらは、上記の融資方法と返済期間(借換含む)を踏まえたうえで、対応できる金融機関を選定していきます。例えば、信用金庫などは当座貸越が弱い、公庫などの政府系金融機関は借換はできても長期の証書貸付となるといった点、自社の取引金融機関の融資シェア、他行取引の提案状況等を勘案して行います。
四番目以降に優先する事項
4番目以降は、自社に有利な条件を提示した金融機関を選定すると選びやすいかもしれません。但し、4番目とした保全については、企業の状況によっては最優先で検討すべき状況もあります。例えば、不動産担保余力はあるが、メインバンクのプロパー融資はほぼ一定額に抑えられているなどのケースです。融資における不動産担保の評価については、ほとんどの税理士事務所が対応困難なので、対応経験のある専門家を頼ることをお勧めします。
事業承継を見据えている場合などで、資金繰りに余裕がある場合は最優先に考える必要もあります。
政府系金融機関で2,000社以上の中小企業を融資支援し、事業再生の現場に立ち会ってきた経験から、適切な財務管理と資金調達のサポートが中小企業の成長と事業の持続可能性に不可欠であると深く理解しています。
とはいえ資金調達から経営までについて、何も分かっていない税務の専門家である顧問税理士に相談するのは愚の骨頂です。顧問税理士でこの辺まできちんと管理しているところを融資時代に拝見したことは残念ながらありません(管理できない、管理するつもりもないといった表現のほうが正しいです)。
資金調達から経営までどのようにしたらよいかお悩みの経営者の方につきましては、弊社までぜひお問い合わせください。