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金融機関/銀行の融資審査3-債務償還年数

債務償還年数という指標を聞いたことがありますでしょうか。よく経営者の方々が気にされる自己資本比率をはじめ、様々な財務指標がありますが、金融機関からの融資を積極的に受けていくことを考えている場合は、この債務償還年数を重視する必要があります。会計事務所から提供される資料、特に会計ソフト等から出力された資料のみでは、債務償還年数という指標は表示されないことが多いと考えられますので、個別に計算しておく必要があります。

債務償還年数の算出に必要な数値項目

債務償還年数の定義に入る前に、債務償還年数の算出上必要な数値については、以下の数値になります。

キャッシュフロー(以下CFとする。):経常利益+減価償却費-法人税等

正常運転資金:売上債権+棚卸資産-仕入債務

中小企業の実効税率は、25%~30%の範囲に収まるケースが多いですが、法人税等は経常利益の40%として計算することが多いため、厳しめの評価ですが、40%を基準にしていただければと思います。
特別損益を使用していないのは、その期の特有の事項として、継続的でない突発的な損益が特別損益に含まれているため、経常利益を使用します。

ただし、営業外収益に特別損益に相当するものが計上されている場合は、厳密にはその部分を一過性として除いた数値を使用することになりますが、細かい観点ですので、自社の計算においてはそこまで行う必要はありません。

減価償却費が未計上の場合は、減価償却費を一旦計上しなおして経常利益を算出し、減価償却費を足すことになります。簡易的に債務償還年数を計算する際は、未計上の減価償却費を無視しても構いません(減価償却費に対応する法人税等の金額が多めに出ているため、厳しめの計算になります)。

正常運転資金については、以下の記事「運転資金見合いの短期継続融資」で解説しておりますので、詳細に確認したい方はご覧ください。

中小企業の財務改善!適切な銀行借入の方法

債務償還年数の定義1(一般的)

債務償還年数の定義ですが、こちらには計算式が複数あり、最も一般的なものは、以下の算式になります。

(金融機関からの借入金-正常運転資金)÷CF=債務償還年数(年)

例えば、金融機関からの借入金が50,000千円、正常運転資金が10,000千円、CFが10,000千円の場合は、4年となります。
ここで、債務償還年数ですが、一般的に10年以内であれば正常先、10年以上20年以下は要注意先、20年超は破綻懸念先に該当します(詳細基準は各金融機関ごとに異なります)
金融機関の見ている評価基準として、償還年数を計算することで、自社がどの債務者区分に該当するかを確認できます。

また、キャッシュフローがマイナスの場合は、債務償還年数もマイナスになるため、返済不能と判断して破綻懸念先に区分されることになります。
但し、旅館業や不動産賃貸業などの設備投資負担が重い業種については、設備の償却期間等を踏まえて、正常先とみなされる年数が長くなる点に留意が必要です。

債務償還年数の定義2(厳しめ)

定義1よりも、厳しめの算出方法になります。

(金融機関からの借入金)÷CF=債務償還年数(年)

上記よりも厳しいケースとしては、金融機関からの借入金に役員借入金を加算したものをCFで割る場合もあります。
こちらでの算出は厳しめに見ているので、規模の大きい金融機関から融資を受けている場合には、この視点で見るのが良いかもしれません。

債務償還年数の定義3(緩め)

定義1よりも、緩めの算出方法になります。

(金融機関からの借入金-正常運転資金-現預金)÷CF=債務償還年数(年)

上記の現預金については、定期預金などの拘束性のある固定性預金のみとするかどうかの判断もありますが、手元資金を厚めにするために意図的に借入を起こしているケースでは、この方法で見る方が良い場合もあります。余分に借りている部分については、余剰の手元資金で金融機関からの借入金を返済に充てることができるからです。

まとめ

解説しました債務償還年数の順序をつけると以下の通りになります(上が厳しく、下に行くほど緩めの評価になります)。

  • (金融機関からの借入金)÷CF=債務償還年数(年)
  • (金融機関からの借入金-正常運転資金)÷CF=債務償還年数(年)
  • (金融機関からの借入金-正常運転資金-現預金)÷CF=債務償還年数(年)

普段、経営目標を立てていない方であれば、債務償還年数の定義1(一般的)に基づき、10年以下を目指して経常利益の目標金額を決める方法もあります。この指標は、金融機関からの資金調達だけでなく、自社の状況把握や数値的な目標設定にも広く活用できるものです。ぜひこの機会に、計算してみてはいかがでしょうか。

最後に、政府系金融機関で2,000社以上の中小企業の融資支援と事業再生の現場に立ち会ってきた経験から、適切な財務管理と資金調達のサポートが中小企業の成長と持続可能性に不可欠であると深く理解しています。
これまでにも多くの銀行融資に関連する資金調達の支援実績があり、直近では3年間融資を受けられなかった企業様でも銀行融資を成功させた実績がございます。 資金調達や経営に関するお悩みをお持ちの経営者の方は、ぜひ弊社までお問い合わせください。