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【大阪】日本政策公庫の創業融資を徹底解説【2024年最新】

日本政策金融公庫(以下、公庫)が創業融資制度を拡充し、融資限度額が7,200万円まで引き上げられたことについて色々と話題になっておりますが、様々なメディアでの反応や専門家らしき方の解説を拝見すると、自己資金なしで無担保・無保証の7,200万円の融資を受けれるような非常に的外れなものになっていますので、解説することにしました。

創業融資については、公庫及び大阪信用保証協会(以下、協会)の2つにつき元公庫職員が解説いたします。

公庫の創業融資制度

創業融資制度の変更点

2023年度における創業融資においては、自己資金の要件は創業資金の10分の1必要となっておりましたが、新創業融資制度の廃止に伴い2024年度からは自己資金要件が撤廃され、融資限度額及び返済期間、据置期間が拡充されました。
旧制度との変更点は以下の通りです。創業支援貸付利率特例制度という、創業融資の金利から0.65%金利を引き下げる制度は2024年度も継続されております。

公庫参照URL:https://www.jfc.go.jp/n/release/pdf/topics_240401b.pdf

自己資金要件については、10分の1の要件の以前は3分の1となっておりました。2014年前後に変更があったと思いますが、正式な資料が見当たらなかったため詳細な変更年度についてはご了承ください。
もし仮に、自己資金の要件通りの審査をしているとするならば、公庫の創業融資先の自己資金割合も3分の1から10分の1に近づいているはずです。

公庫融資先における創業資金の調達内訳

以下の図は、公庫の創業融資先においてアンケート結果を取りまとめたもののうち、創業資金の資金調達の内訳について公表されているものになります。年々、創業資金全体の金額が下がっていますが、それに応じて、自己資金の金額や身内(下図の、配偶者・親・兄弟・親戚。以下、身内とする。)からの調達も減っており、自己資金の割合は各調査年度において約25%前後で推移しており、身内からの調達を含めると3割を超える調達金額となっております(返済不要の調達は、自己資金とみなす場合があります)。

公庫参照URL:https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kaigyo_231130_1.pdf

過去に自己資金要件の変更があったものの、特段大きく自己資金の割合が変動しておらず、現在も自己資金の割合は10%台に届いてないことからも、実際の審査では形式的な融資の緩和はされていないことがわかります。そのため、今回の自己資金の撤廃そのものは歓迎すべきことでしょうが、実際に公庫からの融資を踏まえると、20~30%程度の自己資金は準備しておきたいものです。
また、金融機関からの借入金額は94、95年を除けば1,000万円以下で推移し続けておりますので、1,000万円以下の金額で融資金額を設定することがポイントになると読み取ることができます

今回の融資制度の変更の意図

上記の説明で、それでは制度の変更の意味はあったのかと思う方も当然いらっしゃいます。
現役の担当者から確認は取っておらず、弊社の推定にはなりますが本制度の対象となる先を考えていきます。下記の公庫のニュースリリースでは、スタートアップの強化を目的としております。

下図ではスタートアップの支援の全体像を説明しております。このうち、下図の参考2において、J-Startupプログラム(※)選定先」における日本公庫の取引割合 (令和5年3月末時点)と記載されております。

注書きを見ると、「J-Startupプログラム」について 日本公庫のお取引先 約7割 ・世界で勝てるスタートアップ企業を生み出し、革新的な技術やビジネスモデルで世界に新しい価値を提供することを目指し、経済産業省が推進するスタートアップ企業の育成プログラムと記載されております。

推察にはなりますが、当該プログラムの選定先についてはいわゆるベンチャー企業であり、多額の資金が必要としており、従来の自己資金要件に当てはまらない先が増えてきたため制度拡充したものと思います(経産省としても一層推進したい意図があると思われます)。もしかすると、J-Startupプログラム選定先については、決裁権が緩和されているかもしれません(今後の動向を確認する必要があります)。
J-Startupプログラム選定先の数自体も200社前後なので、ほとんどの創業企業にとっては何ら影響のない話として受け止めていただき、自己資金0で融資を受けれることはないと考えていただければと思います(自己資金0円で創業融資が受けられると説明している専門家は、信用に値しないと思っていただいて良いです)。

金利などその他

金利水準は下図の通りとなっています。下図は令和6年5月1日時点のものであり、毎月金利の見直しがある点についてはご留意ください。
また、金利が幅になっておりますが、公庫の金利は固定金利になっており、適用した制度による利率と返済年数によって適用される金利が決定される仕組みとなっております。
下図に創業融資の金利において、上段はおおむね5年以内の金利で、下段が制度における最大の返済年数を適用した際の金利なりますので、考えている返済年数についての金利については、公庫の支店まで連絡していただければ口頭で回答してくれます。
利率については、基準利率から様々な特別利率がありますが、実際に使用があるのは基準利率、特別利率A、B、Cぐらいと認識いただくほうが良いです。公庫勤務時代で、下記のEからQの制度は使用したことが無いので、基準金利、特別利率A、B、Cだけ見ていただければと思います。また冒頭でも説明しましたが、創業支援貸付利率特例制度という、創業融資の金利から0.65%金利が引き下げられる制度が2024年度も継続されておりますので、下表の金利から▲0.65%した金利が実際の金利と認識いただければと思います。

参考に、下記に新規開業資金について抜粋しておりますが、特別利率の適用があったとしても特別利率Aの適用がほとんどかと思います。詳細については、公庫の各支店に確認してみてください。

融資制度としての返済期間が長くなった点については、ビジネスモデルに合わせてより長い期間の設定が可能になったと考えられるため、この点は十分に拡充されたといえます。ただし、返済年数においてもその妥当性を確認されるため、機械的に返済年数を伸ばすことができるとは考えないほうが良いです。

また、申込から実際の融資金の着金までは大体1か月前後になりますので、その点を踏まえて準備すべきことを逆算してから創業をご準備ください。

創業融資の金利

公庫、主要利率一覧表:https://www.jfc.go.jp/n/rate/index.html

新規開業資金の概要抜粋

公庫、新規開業資金:https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html

協会の創業融資制度

大阪府制度融資(開業・スタートアップ応援資金)

以下は、大阪府の制度融資になりますので、大阪府以外の方におかれましては各都道府県の協会または各自治体の制度融資をご確認ください。大阪府の制度融資は以下の通りになっております。

融資後3年間、金融機関・商工会/商工会議所等のフォローアップを受けると、金利及び保証料が優遇される仕組みになっており、自己資金の要件については公庫の創業融資の旧制度の10分の1となっております。保証料が上がりますが、無保証の制度も用意されております。

公庫の融資については公庫のみで完結しますが、保証協会付きの融資においては保証をする協会と、資金を融資する銀行、信用金庫などの金融機関の2つが関わりますので、融資実行までは2か月程度は見ておいたほうが良いです。

大阪府制度融資参照URL:https://www.pref.osaka.lg.jp/kinyushien/kaigyo-sien/index.html

まとめ

公庫の融資制度から大阪府の制度融資まで説明いたしました。
制度の変更をそのまま鵜呑みにするのではなく、過去のデータをもとに実際に融資が受けられた方の自己資金の割合や、融資金の金額を踏まえたうえで、ビジネスモデルを構築し、創業計画に落とし込むことが重要だと考えております。
スピードと手間暇、創業融資金額が5-6百万円以下で、今後積極的に規模の拡大も考えていないのであれば、公庫融資のみの利用で必要十分かと思います。公庫及び保証協会の融資をどのような組み合わせで組み立てるべきかは、各企業の経営方針やビジネスモデルに左右されます。積極的な事業拡大や複雑なスキームを考えられている方は、専門家を利用いただくことをお勧めしております。

税理士事務所から様々なコンサル会社が創業融資のサポートをしておりますが、元政府系金融機関出身者の立場から申し上げますと、銀行出身者でもない表面的なサービスでしかなく、さらには融資サポートが不要なケースでもそのまま過剰な支援を実施し、成功報酬として報酬を頂いております。
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融資を受けた後が本当の意味での事業のスタートになりますので、実際に融資審査を行っていた人間かつ、適切なサポートを実施されるところへ、創業支援のご依頼されることを強くお勧めします。

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