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経営状態を把握するための適切な勘定科目の設定

試算表を活用して、自社の経営状況を把握されていますか?試算表を利用することで、企業の財政状態や業績を把握することはもちろん、収益性やキャッシュフローの状況までタイムリーに理解することが可能です。しかし、多くの中小企業においては、試算表はタイムリーに作成されておらず、作成後に活用されていないことがほとんどです。

この点については、顧問税理士が税務中心の会計処理を行っていることが大きな影響を与えており、仕訳の時点で適切に経営状態を把握できる設定や処理がされていないことが原因です。

そのため、企業の経営状態を把握できるよう、部門別会計適切な勘定科目の設定が必要です。

部門別会計

販売費及び一般管理費のすべての経費を部門別に処理することが理想ですが、販売管理システムとの連動が不十分な中小企業においては、すべての経費を部門別に処理することは現実的ではありません。

そのため、まずは少なくとも売上売上原価について部門別に処理を行い(=売上総利益までは部門別に集計)、販売費及び一般管理費については、金額が大きく、かつ各部門と関連性が高いもののみを部門別に計上することで、これまで見えていなかった経営実態が明らかになります。

部門別会計による見える化

売上総利益まで部門別の会計を導入すると、簡単な一例ですが以下のような効果が見えてきます。

図のデータが仮に単月の試算表データであった場合、月別で事業別のデータを比較することが可能になり、季節変動や市場の状況などをより正確に把握できるようになります。ほとんどの会計ソフトには部門別の損益を把握する機能が備わっているため、試算表レベルで毎月このようなデータを簡単に確認することができます。

また、図のようなデータを持っていると、金融機関からの融資においても非常に有用な情報となります。金融機関の担当者にとっては、全社合計のみのデータしか受け取っていない場合と、ABCの3事業の内訳がきちんと把握できている場合では、情報量が大きく異なります。この違いは、担当者が融資のために記載する稟議書にも影響を与えます。例えば、B事業の大型受注が決まっており、売上高や売上総利益が当期末に前期よりも増加していることを、具体的な数値と客観的な根拠資料で説明できれば、増加した運転資金の確保が全社合計だけで集計していた場合よりもはるかに資金調達がしやすくなります。

部門別の処理は手間がかかりますが、売上総利益まででも得られる情報量は大きく異なります。さらに、販売費及び一般管理費まで部門別で集計すれば、営業利益まで明確に把握できるため、より具体的な経営改善の方向性が見えてくるでしょう。

部門別会計の簡易な導入方法

図のように、ABC事業の部門別の仕訳計上を行う場合、従来1仕訳で済んでいたものが、ABCの3仕訳を行う必要があります。販売管理システムなどを活用していない企業では、従来の工数が部門数の倍数になるため、負担は大きくなります。この点において、売上や仕入れデータをエクセルで集計している債権管理のデータを活用することが、作業工数を削減するコツとなります。

ほとんどの会計ソフトにはCSV取り込み機能が搭載されており、クラウド会計ではCSVの取り込み機能が従来型の会計ソフトよりも設定がしやすくなっています。

仕訳計上のルール化

部門別会計を実施するには、仕訳処理に関するルールが必要です。そのため、金額の大きい項目を優先して部門別で処理し、金額の小さいものについては従来通りの処理を継続する方法もあります。経費削減などを考慮する場合、特に注視すべき項目について仕訳の計上ルールを見直し、経営判断に必要なものと不要なものを明確に認識し、適切に設定することが求められます。

管理会計では、販売費及び一般管理費における共通費の配賦という処理がありますが、これを厳密に行うと非常に複雑で、労力に見合った効果が得られないことが多いため、金額が大きく(重要性がある)、かつ各部門と明確に紐づけできるものだけを部門別に処理するルールを決めることが、非常に取り組みやすい方法だと思います。

税務中心の顧問税理士から適切な財務アドバイスを受けられていない、適切な資金調達や借入れ状況が構築できていない、経営の方向性に悩んでいる経営者の方は、ぜひ弊社にご相談ください。

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