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決算資料から見る財務分析/経営戦略

少し前に100円ショップのセリアにおける「大量閉店」の報道がありましたが、この内容に多少の違和感を抱き、決算資料を確認して実際のセリアの状況を分析してみました。「大量閉店」の文言に引きずられて倒産のイメージを抱くかもしれませんが、自社の経営状況を把握するのと同じように、まずは定量的な数値で本質をしっかりと捉えることが重要です。上場企業では非上場企業と異なり、IR情報にて財務情報が開示されているので、開示されている決算情報をもとに、解説を進めます。

セリアの業績推移

下図は、2024年3月期の決算説明会資料に記載されている、業績の概要と売上高・営業利益の推移になります(以下、図表はセリア決算説明会資料より引用)。2021年3月期の営業利益がピークとなっていますが、過去10年の売上高はコロナ禍をものともせず、きれいな右肩上がりで順調に収益を拡大しています。「大量閉店」の先入観だけでは読み取れない、優良企業の業績のように見えますね。データは省略しておりますが、2020年3月期から2024年3月期までの5期間においては、自己資本比率が70%超を維持し続けている優良企業でもあります。

セリアの直近3期間における売上高、営業利益、経常利益、当期純利益
セリアの過去10年間における売上高、営業利益の推移表

セリアの店舗数の推移

下図は、セリアの店舗数の推移になります。2024年3月期に閉店した店舗数は69店舗で、全体の店舗数が約2,000店舗あるため、閉店率は約3%に過ぎず、「大量閉店」とは全く異なる状況に見えます。さらに、2023年の出店数は閉店数の3倍、2024年では閉店数の2倍となっており、不採算店舗を廃止しつつも、積極的な出店攻勢を続けていると考えられます。

セリアの店舗数の推移表

セリアの経営戦略

下図は、セリアの重点施策を説明した資料になります。店舗政策に記載されているように、全国に点在する未出店地域の開拓を進め、並行してスクラップ&ビルドも戦略的に行っていることから、店舗の出店や退店は経営戦略の一環として実施されており、業績悪化による閉店ではなく、積極的な経営戦略の一環であると読み取れます。

セリアの経営戦略

また、2024年3月期の有価証券報告書にて目標とする経営指標として、「未出店地域への出店、出店済み地域での持続的なシェア獲得により企業価値を向上させていく」との記載がありました。一時的に収益性が低下する可能性にも触れていましたが、売上高営業利益率5%以上を維持しつつ、最終的には現行以上の利益率を確保することを目標に掲げていました。「大量閉店」で報道されていたものの実態は、セリアが経営戦略として掲げていた店舗政策のスクラップ&ビルドの推進によるもので、経営不振による意図しない閉店ではなく、積極的な未出店地域開拓に伴う施策であることがわかりました。

このように、経営戦略がきちんと機能している状況では、当初想定していた通りの財務数値が表れ、決算書にその結果が如実に反映されます。ほとんどの中小企業が事業計画書や経営計画書を作成していない状況下では、経営の方向性を適切にコントロールできていないことが、目標とする決算書を実現するための行動を取れていない原因にもなっていると考えられます。適切な経営理念や経営戦略に基づく事業計画を策定し、その内容を確実に実行することが、経営改善や業績の向上につながります。

税務中心の顧問税理士から適切な財務アドバイスを受けられていない、適切な資金調達や借入状況が構築できていない、事業計画書の作成が未了で経営の方向性に悩んでいる経営者の方は、ぜひ弊社にご相談ください。

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